無頼 阿佐田哲也の虚と実②/5
うらおもて人生録 (新潮文庫) |
私にとっては「座右の銘」ならぬ「座右の書」といったところ。
若者に対しての人生アドバイス、といった体裁の本だが、私のような50歳前の中年男にとっても、非常の含蓄のある有意義なアドバイスである。 この色川武大や伊集院静のような人たちが持つ、ある種の「凄み」のようなものは、やはりほかの作者からはあまり感じることのできない貴重なものだと思います。 |
怪しい来客簿 (文春文庫) |
この本を読んで感じることは、奇怪なもの、醜悪なものに対する著者の優しい、受容的なまなざしである。このまなざしは、恐らく、著者自身が、自らを醜悪なものの一人とみなしているところから生まれるのであろう。つきつめてみれば、人間は皆醜なものなのだ。自分の中にある醜悪さに感づいている人には、お勧めの本である。
この本にであったのは、今から20年ぐらい前のことだ。それ以来、折りに触れては、この本が読みたくなる。良書である。 |
百 (新潮文庫) |
近所の本屋さんでさりげなく平積みにされており、思わず手に取って買ってしまったのですが、買ってよかった、読んでよかったです。何が良かったかって、文章がとりわけ良かったです。
「流れる」というのでは決してないけど読みやすく、硬派で確かな感じのする文体です。 家族についての短編が4つ入っているのですが、その家族の面々を描く作者の目と距離感が絶妙です。家族を構成する父親、母親、弟。彼等がどんなルールにつき動かされて生を営んでいるかということを筆者はまず捉えた上で彼等と対していくのですが、それが冷静でいて決して冷たくはなく、あるがままに受け入れているようで、そうでもなく、やはりどこか第三者的で…といった具合に絶妙なのです。ラスト一編、ますます老いる父親を描くところは凄みさえあります。 長年、個性的すぎる親に頭を抑えられてきたと思っている方や、自分の親の老いをみて何だか寂しくなり、親の老いを受け入れがたく思っている方、そろそろ親の面倒をみなくちゃな…と思いはじめた方や親の介護をはじめた方などが読むとかなりぐっとくると思います。 |