ダラムサラからの手紙 Letter from Dharamsala
日本の悪霊 [DVD] |
原作とはだいぶ内容が異なりやくざ映画になってしまいました。 オープニングの渋川の町並みに流れる岡林のラブジェネレーションが最高でした。30年前劇場で見たはずなのに覚えていたシーンは岡林がリヤカーを引いてガイコツノ歌を歌うシーンだけ。監督はあえて白黒映画で閉塞された時代感とリアル感をだしている。佐藤慶が二役だったとは・・・ラストで村瀬は死ぬのか? やくざと学生運動がどうリンクするのか?答えは自分の中にある。 |
邪宗門〈上〉 (朝日文芸文庫) |
この作品で描かれる、ひのもと救霊会は大本教との類似が指摘されるが、その大本教に関する知識のない私にとっては、どことなくキリスト教の初期に既に異端視され、徹底的に弾圧され焼き尽くされたカタリ派に似通うものがあるような気がする。「愛の宗教」とも呼ばれ、神への愛にも通ずるとして男女の愛に特別な価値を置いたというカタリ派と、既成の社会道徳にとらわれない男女の愛しあう形を認めたひのもと救霊会。また、カタリ派とひのもと救霊会の死の観念にも似たところがあるように思う。神の国の実現と人間の真の自由と解放を願う精神が権力者に憎まれ、弾圧を呼んだという点も同じであろうか。
作品の中で、日本の美しい農村風景と、一方で餓死者まで出すようなその社会構造が酷薄なまでに描かれ、救霊会はあくまで農村風土と密接に結びついているが、その宗教的理念は普遍的なものといえるのではないか。 迫害を受け、戦争で荒廃した社会状況の中、救霊会の選んだ道を愚かだと断ずるのは簡単だ。しかし、終戦を境に価値観の大転換を体験した作者は、1つの教義に殉じたこの教団をめぐる個性的な人物達を魅力的に描くことで、人間本来の生き方とは何かを問いかけているようだ。 |
アーユルヴェーダの知恵―蘇るインド伝承医学 (講談社現代新書) |
精神科医師として論理的に分析的にアーユルヴェーダを解説しています。切り口としても斬新で、読み物としても面白い。アメリカにあるマハリシ・アーユルヴェーダ健康センターで体験した時の驚きが伝わってきます。 教本のようなアーユルヴェーダの具体的な治療法については他の本に譲るとして、知的に東洋医学を把握したい方にはお勧めです。 |
わが解体―高橋和巳コレクション〈10〉 (河出文庫) |
高橋和巳を思うとき、これほどまでに誠実に生きた文学者が、ひと昔前にはいたのだなと考えます。この人は、文学に対して、学生に対して常に誠実で、それは身を削る凄まじさを内包していました。そこまでに誠実であるがゆえに、理解されないときや自分の力が及ばなかったときの傷の深さは想像に余ります。一見して優しげで頼りなげな風貌からは想像し得ない激しさと厳しさ、類まれなるインテリジェンス。しかし際立った特徴は、思想・スタイルに違いこそあれ三島由紀夫と同様に行動したことです。その行動とその背景にある思いや考えが記述されており、戦わなくなった我々に切っ先を突きつける、そんな緊張感が漲っています。そしてとても切ない感情が包み込んできます。 |